[編集長コラム]羽の生えたカメラ、「国際ドローン展」
2015年5月21日 / 電子メディア雑感
最近、何かと話題のドローンですが、日本初の見本市「国際ドローン展」が幕張で開催されたので見てきました。
このイベントは、日本能率協会が主催する電子部品の技術展「TECHNO-FRONTIER 2015」の一環として、国内で初めて開催されたものです。ドローンの活用を推奨する経済産業省のほか、国土交通省や総務省も後援に名を連ねています。アメリカ、中国、フランスなどからの参加もあり、全部で50社が出展していました。
まずの第一印象は「人が多い」でした。私は初日に行ったのですが、朝一番から満員御礼状態。期待の高さが伺えます。出し物としては、空撮のほか、測量、災害対策、物流などへの利用例が展示されていました。すでに、マニア向けのオモチャやベンチャーの試作機が並んでいる状況ではなく、10kg以上の積載量(ペイロード)に耐えられる大型のものもあれば、高速で長時間飛行できるものもあり、すでに実用の域にあると感じました。たとえば、コマツ、セコム、日立マクセルなどの有名企業も出ていました。
その中で私が、「電子メディア」という視点で面白いと思ったのは、「配信」というコンセプトでした。たとえば、日本発の産業用ドローン専門メーカーと自称しているPRODRONEの「小型ドローン搭載三輪バイク映像配信システム」は、50ccのバイクにドローンのセットが組み込まれており、いつでも現場に駆けつけて空撮・中継ができるとのことです。また、フランスのParrot社のドローンは世界最軽量でありながら、インマルサットの衛星ネットワークとリンクでき、世界中のどこからでも配信できると謳っています。これはすごいことでしょう。これまで、テレビ局などでしか実現できなかった空撮取材が誰にでもできてしまいます。
■PRODORONE社の製品情報ページ
http://www.prodrone.jp/products
10年ほど前に放送とネットの融合が話題になった頃、テレビ局に勤務されていた先輩から、「テレビ局の本当の力は事件が起きた時にヘリコプターを飛ばして緊急生中継ができることだ」と教えてもらったことがあります。それがいまや誰もができるようになろうとしているのです。最近、中学生がドローンでネットTVに実況中継して騒ぎになりましたが、まさにこの力を使ったということですね。この視点で見ると、ドローンは「ヘリコプターにカメラが付いた」のではなく、「羽の生えたカメラ」だと思ったほうが適切です。
このイノベーションがどこまで進化するか分かりませんが、我々の自由をまた大きく拡張してくれることは間違いなさそうです。ただし、我々のプライバシーもその分だけ抑制されることを認識しておかなければならないでしょう。このイベントでは、ドローンの安全や規制についての講演も多く開催されていました。
OnDeck編集長 井芹昌信
(OnDeckがWebマガジンにリニューアルしたので、本コラムも今後は電子出版だけでなく、広く電子メディア全般で私の「感」に触れたことを書いていきたいと思います)