[編集長コラム]出版社がPODで売上を上げる3つの方法

2015年6月4日 / 電子メディア雑感

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きのう(6/3)、出版研究センター主催のセミナーで講師を務めてきました。「インプレスR&Dのプリント・オンデマンドが変えるサプライチェーン」という表題で、出版社の経営者・管理者向けのものでした。

PODについては先行して利用してきた経緯があるので、これまでも何度か講演を頼まれたことがありますが、今回は出版社の売上という突っ込んだ話をしてきましたので、ここでその骨子だけでもご紹介します。

 

PODというと、1部から印刷・製本できる少部数印刷方式と捉えられるのが一般的ですが、実際に出版社でビジネス利用する場合は、以下の3つのパターンが考えられると思います。

 

A.既存書籍の重版対策(いままで通りで製造方法のみ変更)

この利用形態は、オフセット印刷では経済的に作れないような少部数を製造し、従来どおりに取次・書店に流すというものです。品切れ対策に効果があります。ただし、この場合は既存書籍との継続性の観点から、その仕様(判型、装丁、刷色など)や価格を合わせることが求められるのですが、完全に一致させるのは現在のPODでは非常に困難です。この点が、POD利用を消極的にさせている最大の理由になっています。

 

B.既存書籍のPOD版製品を作って販売(二次商品・新販路)

この形態は、前記Aでの仕様合わせを回避して、新たにPOD版の商品を作り販売する方法です。この場合は別商品となるので、価格も新たに付けることができます。販路としては、アマゾンなどのPODに対応しているオンラインストアが有力でしょう。古い書籍の場合は検索で探して購入するケースが多いと予想されるので、オンラインストアだけでも売上獲得の可能性は十分にあり、うまくいっている実例があります。なお、価格変更の場合は著者に許諾を得る必要がありますが、品切れが解消する話に反対される著者はほとんどおられないでしょうから、ハードルは低いと思います。ちなみに、インプレスR&Dで発表している「出版社向けPOD流通」は、この方式で出版社からアウトソースを受けるサービスです(http://www.impressrd.jp/news/150325/NP)。

 

C.PODを前提とした新製品を発行する(新商品・新販路)

この方式は、発想を転換してPODでできる仕様と原価で新しく製品設計するものです。仕様は制限されますが、既存商品との継続性や流通規則との調整から解放され、従来のモデルでは不可能だった付加価値を付けることが可能になります。この場合は、最初から品切れなし、在庫なしの新出版モデルが実現できます。インプレスR&Dで展開しているNextPublishingはこの方式です。(http://nextpublishing.jp/)。

 

以上、出版社がPODをビジネス利用する場合の3パターンを紹介しましたが、どの方式を選ぶにしても、編集部や生産管理部などの現場任せではなく、経営判断が必要だということが肝心です。なぜなら、PODは印刷方式の1つではなく、伝統的出版と電子出版をつなぐ有力なメディアであり、イノベーションだからです。

 

インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信

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