[視点]DigitalBook2015コンファレンスとBEA2015でのトピックスとは?
2015年6月8日 / ニュースキュレーション
2015年6月26日〜30日まで、米国ではIDPF(International Digital Publishing Forum)の年次コンファレンスであるDigitalBook2015と、米国最大の出版展示会であるBEA(Book Expo America)が開催された。現地メディアではこれらのイベントの内容や発表された内容などが報じられている。ここではそのなかから、電子書籍や電子出版に関する話題を拾ってみた。
今年のテーマは事前から報じられていたように「D2C」(Direct to Consumer)、つまり著者や出版社が読者に直接リーチをしていくという市場動向が基調にあるようだ。著者、出版社、読者以外とはなにかというと、アマゾンである。アマゾンに頼らない出版モデルが関心事項だというわけだ。しかし、著者と出版社も一枚岩ではない。著者にとってはセルフパブリッシング(自己出版)が大きなテーマとなっているし、出版社にとってみれば直販やマーケティングが大きなテーマとなっているわけだ。
The Digital Reader誌によれば、「著者にとっての10のツール」として、セルフパブリッシングを志向する人に向けたオーサリングツールやマーケティングツールなどが紹介されている。具体的にはDropcards(ダウンロード用ギフトカード)、Slicebooks(本の章や節の単位で好みに応じて組み替えることができるサービス)、Momentum(プロモーションキャンペーンツール)、BookGrabbr(ソーシャルメディアを使うプロモーションツール)、BooksILove(書評サイト)、BookHive(読者パネル)、FindMyAudience(ターゲットマーケティングツール)だ。こうしたウェブサービスが活況なのはかつてのBEAとは大きな相違点といえるが、日本でも出版関連のスタートアップが増加してくることになるだろうか。そして、こうしたスタートアップの登場によって、出版業界は活況を取り戻すことができるのか。そうしたことも議論の対象となっているようだ。
また、ニールセンが米国出版市場規模についてのプレゼンテーションを行ったようだが、AAPが発表している月次、および年次の調査と大きく異なる調査結果となっていて、2014年は2013年比率でマイナス5%だとしたことから、その信ぴょう性について議論となっている。BISG(Book Industry Study Group)が出版の定量調査から撤退したことで、米国の市場規模に関する認識が混乱している。
ニュースソース
- 「直販するのかしないのか、出版社に選択の時が来た」米国でDigital Book 2015カンファレンス開幕[hon.jp DayWatch]
- 出版社の変革は遅すぎる?スタートアップは支援可能か?[DigitalBookWorld]
- BEA 2015: サブスクリプションサービスは電子書籍の未来か?[Publishers Weekly]
- BEA 2015: PiracyTrace[The Digital Reader]
- BEA 2015: PubMatch[Publishers Weekly]
- BEA 2015: 著者にとっての10のツール[The Digital Reader]
- 「シェアしてくれるなら、電子書籍を無料であげます」米国の新ベンチャーBookGrabbrが始動[hon.jp DayWatch]
- 電子書籍PRサイト「Bublish」、米Barnes & Noble社の個人作家向けに2ヵ月間無料サービス[hon.jp DayWatch]
- Koboが米国で書店提携プログラム[eBook2.0Forum]
- 大手出版社HarperCollins、電子書籍PRのため音楽検索スマホアプリ大手「Shazam」と提携[hon.jp DayWatch]
- HarperCollinsがLibreDigitalとの契約を更新[DigitalBookWorld]
- 英Nielsen Books統計で混乱、昨年の米国の電子書籍市場規模は前年比-6%だったと発表[hon.jp DayWatch]