【JEPAセミナーレポート】一人出版社を立ち上げた境氏が語る「重視するのはリアル」

2015年6月8日 / 実証実験レポート

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デジタル専門の出版社に最初に求められるのは、ネットよりもリアル。そう語るのは、「一人出版社」のCreative Edge School Booksを立ち上げた境祐司氏。2015年6月5日に開催されたJEPAセミナー「電子書籍が順調に売れ始めた理由」では、立ち上げから本格的な運用に入るまでに体験したことについて詳細な説明が行われた。

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優良コンテンツを無償公開することも必要

 境氏が死ぬまで続けられる仕事として選択したのが、電子書籍やウェビナーといったデジタル専門の出版社を一人で立ち上げ、運営すること。「一生続けられる仕事に育てたいという覚悟のもと、2013年から(執筆などの)今までの仕事を少しずつ減らしながら切り替えてきた。電子出版だけで生活できることはクリアできた」と、最初の目標はクリアできたと語る。
 しかし、ここにくるまでに失敗もあったと境氏は語る。「先行事例を知識としてもっていたのだが、それがなかなかうまくいかなった。というのも、参考にした成功例が大企業のものであり、個人が真似をしてもうまくいかなかった。大手広告代理店が語るさまざまなマーケティング手法は勉強にはなっても、いざ自分で使おうとしても十分機能しなかった。特に知名度がないこと、媒体としての力がないことは大きかった」と紹介。これを踏まえ、自分にあった戦略を見つける方向に転換したという。
 具体的には、「訪問ワークショップ」を行うことで、実際の読者が抱えている課題を解決するというもの。「出版物の多くが、著者や編集者がこれなら売れるだろうというプロダクトアウト型。これを、読者に話を聞いて買いたいとおもう書籍を作るというマーケットイン型を採用した。実際には、訪問ワークショップとして、読者(お客)が困っていることを直接講習することで、どこでつまづいているのか、どんな悩みがあるのかを確認することができた。」と説明。たとえば、グーグルがモバイル対応サイトを評価する方針に切り替えたときには、いくつかの企業が自社サイトのモバイル対応を最優先で行う必要に迫られていたと紹介し、「その解決策をまとめたコンテンツを1日で作り上げて提供した」といった実例も公開した。
 また、優良コンテンツを無償で公開することで、多くの人にアピールしたことを紹介。「無料コンテンツとして1章だけ公開することは多いが、それでは人は集まらない。一生懸命作った価値のあるコンテンツを無料で公開するからこそ、人は集まる。こうして無料で公開したコンテンツを元に、再度新しい商品を有料で販売できるように作り出すのがいい」と述べた。この活動はプレスリリースという形で配信することで、より多くの人にアピールしたと境氏は語る。
 この背景にあるのが、認知度の問題だ。認知度の高いサイトやコンテンツであれば、ここまでの努力は不要かもしれないが、認知度の低いサイトであれば、どのようにして人を集めるかが重要というわけだ。
 このようにして集客した読者に対し、読者専用のページを用意し、追加コンテンツの公開、質問の受付、関連ウェブキャストの視聴など、さまざまな情報を届ける努力を行っているという。技術的にはオープンソースのeラーニングシステムを採用し、これらの環境を整えたという。
 

驚きを与えるサイトデザインを重視

 マーケティング手法として、「4media」と呼ぶ情報アクセスへの敷居の低い順に、伝える情報を段階的に詳細化していく手法を採用。これをコンテンツ販売の1カ月から3カ月前から順次進めてきたと紹介。
 この4mediaは、「ランディングページ」「スマホコミック」「エクスプレーナービデオ」「デジタル書籍」の4段階で構成されるという。
 ランディングページは、アクセスする際にもっとも敷居の低いものとして設定したウェブページで、15秒程度で読めるものとして用意する。
 次に、スマホコミックは印象を与えるコンテンツを1分程度の時間で流し読みできるように用意するコンテンツ。境氏はcomicoのようなタテ読みコミックを採用することで、アクセスしてきた読者にインパクトを与えるようにしたと説明。コミック以外であれば、娯楽性が高いものであれば同様の効果が得られる。
 こうして興味を示した人に対し、次に提供するのがエクスプレーナービデオ。これは多くのサイトで導入されている動画コンテンツで、共感を与えることを目的としている。動画コンテンツは音がなくても画面が小さくてもかまわず、伝えたいおもいやコンセプトを物語化することが重要としている。
 ここまで共感を持ってアクセスした人に対し、詳しく読めるコンテンツとしてデジタル書籍を提供する。デジタル書籍を提供することで、全体像をつかんでもらい、購買購読にむすびつけるというわけだ。
 大切なのは、ぱっと見ただけでもわかるコンテンツをまず提供し、そこから本当に読んでもらいたいコンテンツにつなげること。これを実践することで、認知度向上からそのコンテンツに対する共感を高めることができるとしている。
 もちろん、これらはネット上のマーケティングであるが、リアルイベントを同時に行うことで、さらに共感を高めることが大切であると境氏は強調する。なお、この仕組みは作家やアーティスト向けにブックストアレンタルスペースとして提供されている。
 

ネットはファンがついてから

 デジタル専門の出版社を目指しながらも、重視するのはリアルでのコミュニケーション。これが境氏が実践してきた成果といえるだろう。「広告代理店で学ぶようなマーケティングは、高度すぎて役に立たなかった。ネットマーケティングをやるのであれば、ファンがついてからがいい。そのファンを集めるには、リアルを重視するのが確実であり、その際にいかに共感していただくかが重要だ。共感していただいた方に、一歩先に進んでもらうようアプローチするときにネットは効果的」と説明。リアルイベントでは、有料コンテンツを限定公開するなどサプライズも重要と紹介。実際、本セミナーでも参加者向けに24時間限定でコンテンツを無償公開するなど、サプライズを実践する様子を示していた。
 「もし、私と同じようなことをしたければ、自らの影響力をまず判断することが大切。情報発信力はあるのか、得意領域はあるのか。どちらもなければないなりの方法はあるだろう」
 電子出版では、いかに知ってもらうか、そして買ってもらうかが重要だが、境氏の取り組みは非常に参考になるだろう。ちなみに、境氏はこの1年で10kgもやせたと話しており、本当に身を粉にして取り組んできたという印象を参加者に与えたのが印象的だった。
 

Creative Edge School Books
JEPAセミナー報告
 
(編集部)

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