[実証実験]楽天ブックスでPOD書籍の販売を開始

2015年7月21日 / 実証実験レポート

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7月21日より楽天が運営する「楽天ブックス」にて、インプレスR&D「NextPublishing」取り扱いPOD書籍の販売を開始しました。今回は、その裏側を紹介します。
 

POD設備がなくてもネット書店がPOD書籍を販売する方法

 今回、POD書籍の販売を開始した楽天ブックスのPOD販売は、アマゾンやhontoと大きく異なります。アマゾンとhontoの場合、PODの製造設備を保有もしくは直接利用できる状況にした上で、読者の注文ごとに1冊ずつ印刷・製造して出荷します。これに対し、楽天ブックスはPODの製造設備を保有することなく、受注を見込んで最小数を在庫する方式を採用しています。
 具体的な仕組みを説明します。ネット書店で注文があれば、保有する在庫の中から出荷します。利用者にとっては即出荷になりますので、ほかのPOD対応ストアと同等のサービスとなります。一方、ネット書店にとっては、出荷で在庫が減った分だけをPODで印刷・製造し入荷すれば、必要最小限の在庫でPOD書籍を販売できることになります。
 この仕組みを利用することにより、ネット書店はPOD設備を構築することなく、少ないリスク(最少1冊の在庫を保有)でPOD販売事業が行えます。
 実はこの仕組みはアメリカでは既に実行されているものです。書籍流通大手のイングラムでは、PODで製造できる書籍に関しては3部のみ在庫を保有し、出荷した分だけ子会社のライトニングソースで製造して補充しています。今回、この仕組みを楽天ブックスで実現したというわけです。
 

一般書店でのPOD書籍取り寄せ機能に期待

 楽天ブックスでPOD書籍の販売を開始したことで、もうひとつメリットがありました。楽天ブックスが提供しているリアル書店向けサービス「楽天ブックス 迅速配送サービス」を利用しているリアル書店でPOD書籍の取り寄せが可能になったのです。
 NextPublishingでは、特約書店制度によりリアル書店でのPOD書籍の販売を行っていますが、契約しているリアル書店が限られています。そのため、リアル書店でPOD書籍を手軽に取り寄せて販売する機会が限られていました。
 「楽天ブックス 迅速配送サービス」は、楽天ブックスと契約しているリアル書店が、楽天ブックス経由で書籍を取り寄せて販売できるサービスで、最短翌日に取り寄せられるのが特徴です。今回、楽天ブックスでPOD書籍の取り扱いを開始したことで、このサービスの対象となりました。結果として、リアル書店は楽天ブックス経由でPOD書籍を取り寄せて販売できることになります。
 これにより、インプレスR&Dと直接契約しなければ取り寄せられなかったPOD書籍を楽天ブックス経由でも取り寄せられるようになったのです。
 
 多くの出版社はPODを「製造」の視点で見がちですが、今回の事例でわかるとおり、PODは「流通」の視点で見てこそ、その価値が明確になります。今回の楽天ブックスでの販売は、POD書籍の流通という点で大きな一歩です。なにより、PODの製造設備を保有しないと参加できないとおもわれていたPOD書籍販売を、わずかな在庫を保有するだけで参加できるということを示すことができました。まだまだ過渡期ですが、POD書籍の今後に注目してください。

 
楽天ブックスNextPublishingページ
http://books.rakuten.co.jp/event/book/store/pod/

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