[実証実験]POD、レイアウトと価格の微妙な関係(舞台裏 第4回)
2015年11月2日 / 実証実験レポート
編集長コラム書籍化の編集過程をつづっていますが、横書きを縦書きにする作業と、基本的な用語の統一、今回の私のアイディアであるキーワードの設定を終えて、今、紙面のレイアウトを考えています。編集長がコラムで書いている通り、制作にはNextPublishingを使うので、紙書籍用のPDFデータは自動組版で作ります。超原稿用紙で書いた1つの原稿があれば、色々な組版(紙面レイアウト)をすぐに試すことができるのが特徴なので、試してみました。
はじめ、「縦組みで易しい読みもの」というイメージから選んだのは、新書サイズのシンプルなデザインでした。連載の原稿そのままの状態でPDFにしてみたものを著者に最初に見せたのもこのデザインでした。今現在編集中の原稿で自動組版をしてみると、このような感じです。
【レイアウト案1サンプルPDF】
私は雰囲気が出ているレイアウトだと感じました。著者の井芹編集長も、このフォントが好みという反応でした。版面としては、級数13級で、本文にして1ページに704文字入るデザインです。ただ1つ問題があります。新書サイズは、A5、B5などと違って、市場で「新書」として作られているサイズにばらつきがあることや、サイズが小さすぎることにより、PODとして印刷することができるストアが限られてしまうのです。また、一般に人間が読みやすい文字のサイズは一定の範囲に決まっているようで、印刷書籍の本文の文字サイズもその範囲内でつくるのが普通だそうです。サイズが小さくなればなるほど、1ページに入る文字数が少なくなります。NextPublishingが採用しているPODでは、私がわかっている限り、基本的に判型によらずページ単位で印刷コストを計算するので、判型が小さくなり、ページ数が増えれば増えるほど、コストがかかる本を作ることになります。読者が買いやすい価格を設定できなくなってしまいます。
どんな出版物もそうだと思いますが、今回の書籍は、できるだけたくさんの人に読んでもらいたいです。そこで、これまでNextPublishingでたくさん書籍を出している四六サイズで自動組版してみました。新書サイズと同じで、級数は13級、1ページの文字数は704字です。
【レイアウト案2サンプルPDF】
悪くはないのですが、始めの新書サイズに比べると何か腑に落ちないものがあります。個人の感覚なのかもしれないと思い、今回の書籍の編集長を勤めるOnDeck編集部の先輩に相談したところ、この連載の原稿は、段落の始めは1文字分インデントされているものの1段落が短いので、四六サイズだと収まりが悪いのだと思う、とアドバイスをもらいました。
ちなみに、四六サイズでフォントだけ著者好みのものにカスタマイズしたら、このようになりました。
【レイアウト案3サンプルPDF】
ストアを限定してでもターゲットになる読者をしぼったイメージ通りの書籍を出すか、広く販売することを優先するか悩んでいます。PODの場合、ページ数が価格に大きく影響するので、早くレイアウトを決めなければ商品設計に関わります。
他にもNextPublishingの用意している基本的なレイアウトでいくつか組版をしてみました。
【レイアウト案4サンプルPDF】易しいビジネス書のイメージ(15級、1ページ当たり570字)
【レイアウト案5サンプルPDF】少し昔の雰囲気の縦組み書籍(12級、1ページ当たり704字)
みなさんだったら、どれを選びますか。
(OnDeck編集部 細谷)
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