[編集長コラム]文章校正ツール「Just Right!」は使える

2015年12月11日 / 電子メディア雑感

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先週のこのコラムで、22年ぶりに編集実務をやっている話をしました。今週はその続きで、校正の話です。

実は、私は駆け出しの頃から文字校正が苦手でした(いまでもですが)。自分では一生懸命に見ているつもりなのですが、本が出てから「あれっ」という経験が何度もあります。特に、誤字見つけや用語統一が苦手でした。

それである時、編集部で使う用語をコンピュータの力で自動的に統一することを思い付き、用語統一プロジェクトを立ち上げたことがあります。プロジェクトチームで用語辞書を作り、校正プログラムを開発し、けっこう頑張りました。

しかし、用語統一は実際にはとてもむずかしいということを知りました。理由は、著者それぞれにこだわりがあるし、著者が所属する会社や学会で決まっていて、それを使いたいという場合もありました。また、本によって、読者対象の違いにより、必ずしも統一してしまわないほうがいいケースもありました。ということで、このプロジェクトは最初考えたほどの成果を上げることはできませんでした。

 

時は流れていま、今回の作業ではジャストシステム社の文章校正ツール「Just Right!」を使いました。Just Right!は、文章校正ではすでに定評あるツールですが、私は編集実務から遠ざかっていたのであまり使っていませんでした。しかし改めて使ってみると、私がプロジェクトを始めた頃とは隔絶の感があり、素晴らしいものでした。

まず、このツールは同社の一太郎だけでなく、マイクロソフトのWordでも使えるのがありがたいです。Wordにインストールすると、基本メニューの中にさりげなく「Just Right」のメニューができます。

使い方は簡単。そのメニューをクリックするだけです。今回、対象にした本は200ページくらいのボリュームですが、1分もしないうちに結果がでます。やってくれることは、「誤字脱字、送り仮名、用語統一、文体統一、表記ゆれ、など」のチェックです。このときに、原稿をじかに修正せず、別モード(別画面)で作業できるようになっているのが、とても安心で便利です。

今回の原稿では1000カ所くらいにチェックが入りました。これがすべて間違いという訳ではなく、気になるのでアドバイスをしてくれているものも含まれています。具体的には、用語統一では原稿内の不一致の単語はすべてチェックされますが、勝手に変更するのではなく、候補の用語が示されて、待ち状態になります。ユーザーは、ケース・バイ・ケースで自分の意思により修正が行えて、とても便利でした。

Just Right!は全体的なコンセプトとして、コンピュータによる「自動」校正を目指すのではなく、ユーザーへの「支援」を目指していることがよく分かりました。私がかつてチャレンジした用語統一プロジェクトは、いま思えば自動を目指しすぎたので融通が利かなかったのだと思いました。

 

いまは、企業がWebなどのオウンドメディアを持つ時代です。新聞社や出版社だけでなく、一般の企業でも人に見せる文書を作らなければならないニーズが高まっていることでしょう。Just Right!は、ビジネスで文章を作る必要のある人には必携だと改めて思ったしだいです。

もちろん、この原稿でも支援してもらいました。

 

インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信

(この連載が書籍になりました。:http://nextpublishing.jp/book/6865.html

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