[視点]EPUB 3.1のドラフト版を公開とコンテンツ側の課題

2016年2月8日 / ニュースキュレーション

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 IDPFは次期電子書籍のファイル形式であるEPUB3.1のドラフトを公開し、広く意見を募っている。この仕様策定に日本から加わっている村田真氏(日本電子出版協会技術主任)は公開したドキュメントにおいて、重要な点の指摘をしている。それは「現在、打ち出されている重要な原則として『EPUB 3.0/3.0.1の出版物は、変換作業を行わないとEPUB 3.1には適合しない。』がある。日本から、この原則に対して注文をつけるのなら1月のドラフトが公開されてから一か月程度のうちにそうすべきであろう。」ということだ。
 この村田氏の指摘は、EPUBの仕様ひとつひとつのことを問題にするまえに、EPUBの仕様のバージョンアップにあたり、過去のEPUBファイルとの互換性が失われる可能性を示唆している。つまり、EPUBファイルは、CMS(コンテンツマネジメントシステム)などを使って、抽象度の高いレベルで論理構造をマークアップしたマスターファイルから、特定のバージョンのEPUBファイルを生成しているのだろうから、EPUBの要素ごとの互換性が失われたとしても、新たな仕様に合わせ、再度、EPUBファイルをマスターファイルから生成すれば問題ないという考えに基づいているようだ。しかし、日本の電子書籍制作の現場を見ると、必ずしもこのようなマスターファイルから生成されているわけではなく、また、できあがったEPUBファイルをコンバーターで変換することもそう簡単ではないものが多くあるようだ。
 仮に、EPUB 3.1の仕様がこのまま確定し、電子書籍の閲覧ソフトがEPUB3.1にバージョンアップすると、過去のEPUB 3.0、3.0.1のファイルの閲覧に障害が出る可能性もあり、コンテンツを優先に考えるならば、閲覧ソフトのバージョンをとどめておくようなことが必要になるかもしれない。また、システムを複雑にしたり、日本独自のバージョンの進化をさせたりするような折衷案が出てくる可能性もある。
 仕様策定に関しては、理解するのが難しい話題ではあるが、コンテンツ制作側では将来のファイル形式の変更に備えたマスターファイルの管理やメンテナンス、さらにはCMSの活用などを視野に入れるべきだろう。特に、現在、EPUBで表現できることはそれほど多くはなく、今後は教科書や学術書で必要とされる索引、用語集、参考文献などの要素も入ってくるのは間違いないだろう。出版社、そして制作側になげかけられた課題は実は大きい。

ニュースソース

  • IDPF、次期電子書籍ファイルフォーマット規格「EPUB 3.1」規格の初期ドラフト版を公開[hon.jp DayWatch
  • EPUB 3.1 Changes from EPUB 3.0.1[IDPF
  • EPUBサミットが4月7日〜8日にフランスで開催[IDPF

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