[編集長コラム]重力波発見、近づくパラダイムシフト

2016年2月18日 / 電子メディア雑感

LINEで送る

 先週、「重力波発見」のニュースが世界中を駆け巡りました。アインシュタインの予言から100年目という奇遇なタイミングもミステリアスでした。

 

 学生の頃は天文小僧で、いまでも宇宙大好き人間の私としては、ドキドキ・ワクワクの知らせでした。このニュースの持つ大きな意味の1つが、「重力波望遠鏡」ができたということだと思います。これまでは、光や赤外線などの電磁波でしか宇宙を見ることができなかったわけですが、これからは重力波でも宇宙観測ができることになります。これは画期的なことで、生物で言えば、目に加えて耳も持てたというところでしょうか。きっと、宇宙(我々の住んでいる世界)の成り立ちがさらに明らかになることと思います。

 このところ、この発見以外にも、世の中の成り立ちに関する大きな発表が相次いでいます。昨年には、「量子もつれが時空を作る仕組みを解明」という大栗博司氏らの研究が発表されました。これは「これまで時空は相対性理論によるマクロ世界の法則でしか表現されていなかったのが、量子論というより根本的であるミクロな世界の言葉で表現することができた」ということだそうです。誤解を恐れずに言えば、量子力学で時空の成り立ちを記述できたということだと思います。普通の感覚として驚くのは、空間は空っぽかと思いきや、量子の作用によって作られているということでしょう。

 また、2013年にはヒッグス粒子が発見されています。こちらは、物質の質量(重さ)の意味を実証したものです。宇宙全体にはヒッグス粒子が満たされていて、それらが作るヒッグス場が万物に質量を与えているというのです。つまり、物の重さは物自体ではなく空間が作っていたということのようです。

 これらの発見は、いずれも宇宙の成り立ちに関することです。宇宙は遠い存在で日常生活には関係ないと思いがちですが、我々の住んでいる地球も宇宙の中に浮かんでいるわけで、我々は宇宙で暮らしているのです。関係ないはずはありません。

 

 最新の宇宙観測によると、我々に馴染みのある物質は宇宙全体の5%以下しかなく、25%くらいがダークマター(暗黒物質)、70%くらいがダークエネルギー(暗黒エネルギー)だそうです。ダークマターとダークエネルギーについてはまだ何も分かっていないので、我々は宇宙のたった5%以下のことしか知らないということになります。皆さん、そんな認識をお持ちでしたか。

 さらに言えば、空間と時間は関連していて不可分であり、空間は何らかのエネルギーにより作られている具体的な存在で、物質は空間の中でエネルギーが集約した形態のことのようです。つまり、物質のほうが不確かなもので、空間のほうが具体的だということになります。時間のほうも我々の認識とは異なり、単なる便宜的な基準ではなく、実体がある存在らしいのです。そもそも、相対性理論によると時間は一様には流れておらず、あなたと私は別の時間を生きているということなのです。

 今回の重力波の発見を含む近年の物理学・天文学の進展は、いままで知らなかった宇宙のもっと大きなもの、もっと深いことを知ろうとする挑戦です。それらが分かったとき、かつて天動説が地動説に変わったように、我々の世界観の大変革が起きることでしょう。きっとそれは、おそらく誰もが信じられないような驚くべきものだと予感します。そのパラダイムシフトは、もう近くに迫っているような気がしてきました。

 

 今回は個人的に興味のある宇宙について書かせてもらいましたが、本コラムのテーマであるデジタルの領域でもバーチャルワールドが創られつつあります。こちらの世界も、我々の日常の認識とはずいぶん異なる世界です。最近の、IoTやビッグデータや人工知能の進展は、人工的な宇宙を作っているような気がしています。もし人間の手で宇宙のようなものを創るというのなら、いまの自然宇宙のことをもっと知っておかねばならないと思うのです。そうでないと、とんでもないものを創ってしまうかもしれません。

 ちょうど昨日、日本からもブラックホールなどの謎に挑戦する天体観測衛星「アストロH」が打ち上げられました。宇宙の真理探究に挑戦されている方々と、そこに予算を付けてくれている方々に感謝しつつ、応援していきたいと思います。

 

インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信

※この連載が書籍になりました。『赤鉛筆とキーボード』

http://nextpublishing.jp/book/6865.html

Facebookにコメントを投稿

コメント

コメントは受け付けていません。





TOPへ戻る