[編集長コラム]著者が主導する出版は時代の要請

2016年3月31日 / 電子メディア雑感

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 昨年の夏に弊社で行った、新時代 著者発掘プロジェクト「出版企画・公開大募集」ですが、応募19タイトル中、9タイトルを採用し、そのすべてをこの3月までに発行することができました。
 いずれもユニークなテーマの応募でしたが、その中で『メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。』と『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』は印象に残っています。メイカーズは、高須さんというチームラボMake部発起人の深圳(シンセン)での奮闘記を書かれたもので、その場に居る者しか分からない熱気を伝えてくれています。販売成績も順調でレビューでも高い評価が付きました。
 Workflowyのほうは彩郎さんの作で、予約期間にも関わらずKindle全体の250位くらいまで駆け上がり、その後も文書作成ソフトカテゴリーの一位を続けるなど、審査チームを驚かせました。実は、私はこのソフトのことを知りませんでした。でも、すでにたくさんのファンがいたようです。使ってみると、新しい概念のソフトだということと、我々はまったくノーマークだったことが分かりました。

 

 これまでの出版では、紙・電子を問わず編集者が企画し、または著者を探し、発行してきました。しかしこれだけ多様化した時代、いまは編集者のアンテナだけでは新しいテーマを見つけることも、著者を発掘することにも限界があると感じています。そのテーマに精通して、本を書く意志のある方(著者)が、自ら手をあげてくれた企画を採用することは時代の要請と思い、始めた試みでした。
 一般にはセルフパブリッシングがその代表例と捉えられていると思いますが、セルフパブリッシングの場合は編集者や出版社は介在せず、すべての業務を著者が一人でやらなくてはなりません。それができるのは、小説などの本の形態がシンプルなものか、ツールや仕組みを理解して使いこなせる一部の人に限られることでしょう。今回、弊社で行った公開企画募集は、編集者が付き、ISBNコードが付く、通常の出版方式なので、セルフパブリッシングとは本質的に違っています。

 

 本来、本の主役は著者であることに間違いないし、その法的権利も責任も著者にあります。しかし、これまでは著者が自ら手を挙げる手段が乏しかったし、一人で原稿を揃えるノウハウやツールもなかったので、編集者が黒子として全体を管理し、その采配の元で出版が行われてきたわけです。しかし、インターネットを代表とする双方向系の情報システムが社会的に浸透したことで、企画の権限が編集者から著者に移りつつあることを理解しなければならないと思っています。
 この是非を業界人と議論すれば、きっと見解が分かれることでしょう。「是」の理由としては、企画のバリエーションが広がる、新しい著者を発掘できる、著者が手を挙げたものなのでやる気が違う、などでしょうか。「非」の理由としては、著者に企画させるとゴミ企画ばかりになる、売れるかどうかの責任の所在がはっきりしなくなる、などでしょうか。
 今回は、全体のコスト負担は従来通り出版社側ですので、たしかに何でもかんでも出版するわけにはできません。課題になるのは、手が上がった企画の中から、出版社がコスト負担をして編集者をつけていいかどうかを判断する方法でしょう。または、いい著者に応募して頂けるような対象に呼びかけることでしょう。

 

 時代は我々の予想をはるかに超えるスピードで進んでいます。先入観を捨て、理にかなった方法を模索することが求められていると思っています。

 

p.s.
 ちなみに、今日は公開企画募集第2弾の受付締め切り日ですが、このコラムを読んで頂いた人のために、一日延長して4月1日まで受け付けます。この機会にチャレンジしてみませんか?

 

インプレスR&D、出版企画・公開大募集 第2弾 申込みページ:
http://koukaiboshu.nextpublishing.jp/

 

インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信
※この連載が書籍になりました。『赤鉛筆とキーボード』
http://nextpublishing.jp/book/6865.html

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