[編集長コラム]「出版社の課題と対策」への意見紹介

2016年5月20日 / 電子メディア雑感

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 先週、「OnDeck提言2016 出版社の課題と対策」を発表し、それに対するアンケートを実施しました。多数のご回答、ありがとうございました。
http://on-deck.jp/archives/20154045
 まず全体としては、すべての設問でほとんど(9割以上)の方が、今回の提言に賛同されていました。数量的な集計結果は追って公表する予定ですが、ここでは自由記述の意見の中から主なものを紹介したいと思います。少しだけ、私のコメントも付記させて頂きました。

 以下、意見を書かれた方の立場を元に、提供側、読者側、著者の3つに分けて紹介します。

 

<提供者側の意見>

  • せっかくデジタル部署を設置しても、そこだけが閉じた世界になってしまい、会社全体のデジタル力の底上げには繋がっていないのが現状かと思います。アシェットさんのように、全社を挙げてのデジタル学習強化への取り組みが必須だと感じています。

>もちろん、全社として取り組めればそれに越したことはないですが、特区でも経営者がそれと認識していれば、その後の発展につながるのではないかと思います。

  • 紙版に縛られすぎ。意味のない色調の正確さを求め、文字を拡縮小しても同じ文字レイアウト(段落や禁則)は無理

>紙のルールと品質を、そのまま電子に持ち込もうという意向はいまでも多いですね。やはり、作り手が自分で使ってみるのが一番の解決策だと思います。

  • 大多数の専門書出版社の悩みは「専門書において電子出版の望ましいビジネスモデルは見えない」ということだと感じています。もともと限定的なユーザー数しかない分野の専門書の電子版を出したところで、極端に言えば、本来の売り上げ分がペーパー本と電子本とに分散するだけで、マーケットが拡大するわけではない。また電子はペーパーよりも安くできるはずというユーザーの根強い価格意識があり、出版社の全体利益を圧迫するのみと考えている専門書出版社のトップが多い。

>さまざまなデータが、電子を出したほうが紙も売れるという予測を裏付けていますし、小さくとも確実にニーズがある市場では、内容がしっかりしていれば高価格でも売れるという実証もあります。専門書は、オンラインでの検索による購入が期待できるという面もあります。

  • 業界の低水準を嘆くフェーズはいいかげんやめればいいと思っていて、つまり隗より始めよという話なので、提言者としての御社についてはNextPublishingの実稼働を心待ちにしています。

>ありがとうございます。NextPublishingはすでに実稼働していますが、これからさらにアクセルを踏みます。今回のOnDeckの見直しはそのためです。

 

<読者側の意見>

  • 業界全体としてみたときに全然体質が変わっていないな、と。アクションが遅いのは、本当に読者ニーズや市場調査を行った場合、自分たちが予想している以上に悪い結果が出るのが見えているから本気のマーケティングをしないから、だと見ています。業界にいる人達の気持ちもわかるけど、がんばれ!と叱咤したい気持ちでいっぱいです。

 

  • 電子書籍・雑誌を読むようになって、マーケティングの弱さを実感している。定期刊行の雑誌を買い逃がしたり、書籍の続刊が出ているのに気がつかったりする。思えば書店の平台は有効なマーケティングツールだった。電子書籍ではそれに代わるプッシュの情報発信がより重要となる。

>同感です。

  • 紙媒体の書籍に対してのアプローチから脱却できていない。・・・電子化ならではのコンテンツがないと紙媒体を選んでしまうのではないか。

>そのためには、電子を前提にした企画力が必要ですね。

  • いろいろ課題があっても、会社が継続できている状態では変わらないかなと思います。本当の変化が起きた時には生き残るところは残るし、対応できないところは消えていくだけなのではないでしょうか。ただ、権利関係だけは会社に関係なくはっきりさせておかないと、あとの世代に申し訳ないでしょう。会社は消えても著作物は消えないで残ってほしいものです。

>著作物は出版社や編集者のものではなく、著者および社会のものだと認識する必要がありますね。

  • 電子出版の登場で、著作権とビジネスが同等、もしくは著作権よりビジネスに重点をおいた展開になるかどうか。そのあたりが電子出版発展のかぎになるような気がします。”

>売上の積み増しには二次利用が欠かせないと思いますが、そのためには権利の明確化が必要という順番になると思います。

  • 本読みの立場としては電子版はとても便利です。特に旅行のときやかさばる専門書は電子版があってよかったとしみじみ思います。・・・時々、読書用のデバイスの出荷台数が一定数を超えるまでは様子見などという意見を見ますが、そこを加速するのは出版社の責任であって、あたかも傍観者のような考え方はよろしくないとも思っています。

 

  • 電子出版の際に紙媒体よりコンテンツの量や質が大幅に下がるケースが目立ち、表紙を飾る芸能人が削られるなど、消費者を欺く内容で顧客離れが目立ち、付録が無くても価格が同じ等「電子媒体は損」という風潮がある。また出版社側もそう思わせたい意図が見える。

 

<著者の意見>

  • 版元によって大きく異なっており、一概には言えない。進んでいる版元もあれば、いまだに契約書すら交わさない出版社もある。規模も異なり、総じて課題と対策を語ることは困難な状況。また、従来の流通の弊害が出ており、マーケティングに対する版元の考えがほとんどないに等しい。現場レベルでも、電子化に積極的な社員もいれば、紙版に固執する社員もおり、社内が一体となって方向を模索する必要がある。

>確かに、出版社によってそれぞれの課題があると思います。今回は総論としてまとめていますので、痒い所には手が届かなったかもしれません。全社一丸でやるには、やはり経営者のリーダーシップが重要だと思います。

  • 情報のメインストリームがウェブに移行しつつあるので、出版物の価格が下落するのは必至と考える。・・・ブーム的なもの、一般的な世間の関心事より最先端かニッチな分野、専門性が高く内容に信頼性が求められるものの方がビジネスとして成立する可能性が高いと思われます。

>同感です。

  • 大変貴重で忌憚のない内容かと受け止めました。しかし,その指摘は出版関係のみならず,日本国内のものを作り出す現場(ということはサービスも含めるでしょうから,社会全体)に当てはまるとも思いました。

>今回の提言をまとめていて、実は我々もそう感じていました。特に、「イノベーションのジレンマ」と「IT力が弱い」についてはそのまま当てはまっていると思います。

 

インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信

※この連載が書籍になりました。『赤鉛筆とキーボード』

http://nextpublishing.jp/book/6865.html

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