コンテンツマーケティング考

2015年2月5日 / 電子メディア雑感

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 最近、「コンテンツマーケティング」という言葉がマーケティング業界で注目されてきているとのことです。マーケティングの世界では、ネット技術が進展するのに伴い、次々に新しい方法や概念が生み出されていて、超ハイスピードの変化になっています。
 コンテンツマーケティングとは、Wikipediaなどでは「価値ある情報を見込み客に提供することにより、利益につながる行動を引き起こすことを目的とする行為」と解釈されています。平たく言うと、「広告で製品宣伝して買ってもらう」から、「製品にまつわる読者にとって有益な情報(コンテンツ)を提供し、それで信頼を得て、結果として購入に結び付ける」ということでしょう。つまり、売らんかなではなく、より本質・本音の世界になってきているのです。
 コンテンツマーケティングについていろいろ調べていたら、興味深い文言に目が止まりました。「メディアもしくは出版社になれ」というフレーズです。これからの企業のマーケティング戦略としては、新聞や雑誌の広告をたくさん出すのではなく、アクセスや「いいね」をたくさん集めるのでもなく、自らコンテンツを作り発信していけ、ということです。つまり、「企業も出版社のようになれ」、なのです。
 上記の変化は企業と消費者という関係から見ると、より本質的で進化した動きに見えます。しかし、我々の出版側から見るとまったく別の恐ろしい絵が見えます。
 まず、製品紹介記事や広告を生業にしてきたような雑誌の役割が、また1つ減ってしまいそうです。特に、広告売上には大きなダメージがあるでしょう。またこの変化は、電子書籍の世界で起こっているセルフパブリッシングとイメージが重なります。セルフパブリッシングは個人がコンテンツを創作し発信しますが、コンテンツマーケティングは企業版のセルフパブリッシングのようです。
 これらの動きは、出版の世界に大きな変化をもたらしそうです。個人も企業も自らコンテンツを作り発信し、顧客と直接コミュニケーションをとる、またはとれる時代になったと認識する必要があります。我々の包囲網はまた一段と強力になり、出版の存在感はより薄まる可能性があるということでしょう。
 しかしさらに深く考えると、いい解釈も成り立ちます。我々はすでに「出版社」になっているか、その近くに居ます。コンテンツを作り、自ら発信することができています。あとは方向づけの問題だと言えそうです。たとえばこれまでは、雑誌の広告は記事と分離する形で表現していましたし、書籍のコンテンツは本というパッケージの中でのみ生きていました。これらのメディアフォーマットの制約からコンテンツを解き放ち、コンテンツマーケティングの流れに沿うように方向づけられたら、時代の流れに乗った視界が開けるのではないでしょうか。
 このトレンドにおいて最も重要な論点は、本当に「コンテンツの時代になった」ということでしょう。読者だけでなく顧客もコンテンツを求めています。今後、出版の出番が多くなるのか、少なくなるのか、それはここ数年の我々の行動によると思います。
 

OnDeck編集長/インプレスR&D 発行人 井芹 昌信

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