地元書店で電子書籍に親しむ

2013年6月10日 / ニューススタンド

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text:林田 陽子

Kobo社と米国の書店団体の電子書籍/端末販売提携プログラムが好調と報じられている。独立系書店が販売代行して売り上げをシェアする。米国の独立系書店は店舗数が微増して、収入も前年比で増加。以前に比べて電子書籍ビジネスに積極的になっている。Kobo社もラジオで大々的な宣伝を行うなど書店販売を重視して注力している。
American Booksellers Association (ABA)は米国の独立系書店の業界団体。先日のBEAで年次総会が開催された。喜ばしいニュースとして「65店が新規入会して、会員が2000店舗に近づいた」と報告された。
同協会CEOのTeicher氏は「目標はより多く収益を得ることだ。過去二年間、出版社がそれぞれ新しいビジネスモデルを試行錯誤してきたことで変化が生じている」としてBEAは今後も出版社を支援して新モデルの実行に注力していくと述べた。
同氏はまた、Kobo社との提携について「この提携は加盟各書店に電子書籍端末とデジタルコンテンツを販売するという柔軟性をもたらした。開始には多大な労力を要したが、我々は発展を続けて、提携の改善を続けている」と述べた。

小売店販売を重視するKobo社

Kobo社は5月末に第1四半期の業績を発表。売上高は前年同期比98%増、登録ユーザー数は1450万人に到達。セルフパブリッシング作品は124か国で10万点を突破して、同社の売り上げの10%を占めている。
Kobo社は各国小売店での販売を非常に重視している。
169ドルのKobo Aura HDは小売店で販売されたKoboシリーズの27%を占めた。独立系書店ネットワークとの提携は米国、英国、ニュージーランドで行っていて、「全世界1万7600の小売店舗でKobo社のeリーディング体験を提供している」と述べている。(ちなみに日本の書店数は現在約1万4000店)。
Kobo社はまた、6月初旬から米国の公共ラジオ(NPR)で行うナショナル・ブランド・キャンペーンで同社の電子書籍/端末の宣伝を行う。ABAによるとNPRの視聴者は独立系書店の顧客ベースで、ラジオでキャンペーンを知った顧客をWebサイトと店舗の両方に誘導できるとしている。650万人以上の視聴者にリーチして、総計1800万リスナー・インプレッションを見込む。キャンペーンは年末まで行われる予定だ。

激変する書籍販売業で新たな道を模索

ABAは独立系書店新興プログラム「IndieBound」を行って地元の書店で本を買ってもらうよう呼びかけたり、POD機メーカーと提携して書店向けに「Espresso Book Machine」を販売したりと、激変が続く書籍販売ビジネス環境の中でさまざまな新しいやり方を模索している。
ABAは以前、Google社が提供する電子書籍販売アフィリエイトプログラムに参加していたが、Google社が2012年に同プログラムを中止。
一方Kobo社は2012年夏にABAと電子書籍/端末の販売で提携すると発表した。
今回の年次総会を取材した「Digital Reader」サイトの報道によると、現在ABA加盟の500書店がKobo社との提携プログラムに参加していて、Kobo社は年末までに1000店舗到達を目指していると述べたという。同サイトの推計では電子書籍販売で店舗側が受け取るシェアは5%から10%だ。
独立系書店はオンライン販売で競合するAmazon社への敵対意識が強く、電子書籍への警戒感も強いように見受けられた。だが、状況がやや変化してきたようだ。
電子書籍の利用がアーリーアダプタから子供や高齢者など一般ユーザーに広がっていくのはこれからだろう。地域の書店で電子書籍端末の宣伝や説明をしたり、セルフパブリッシングの著作者を紹介したりすれば、長年その店を利用してきた本の愛好者にも喜ばれるのではないだろうか。

参考
ABAのニュースリリース
http://www.bookweb.org/news/aba%E2%80%99s-membership-meeting-and-town-hall-indies-fueled-passion-and-belief
http://www.bookweb.org/news/kobo-fund-npr-underwriting-campaign-strengthen-kobo-brand-us
publishersweeklyの報道記事
http://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/bookselling/article/57581-bea-2013-the-bookstores-are-alright.html
digitalreaderの報道記事
http://www.the-digital-reader.com/2013/05/29/aba-reports-that-kobo-partnership-with-indie-booksellers-is-now-twice-as-large-as-the-google-partnership-it-replaced/#.UbUo9_lSi86
Kobo社のニュースリリース
http://cafe.kobo.com/press/releases/kobos-bet-to-double-down-on-passionate-booklovers-pays-off:-q1-ereader-sales-up-145-year-over-year

林田陽子:翻訳家、司書。1978年、慶應義塾大学文学部卒業。同大学日吉情報センター、日経マグロウヒル(現日経BP社)、アスキーに勤務。1986年より翻訳業に専念。2010年6月から、ジェリー・パーネル氏の「Computing at Chaos Manor」をScience Book Clubにおいて、Web閲覧方式とEPUBファイルダウンロード方式で販売中。

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