書籍全体に占める電子書籍の割合は約8%に−米国市場動向と比較しながら今後を見る

2013年9月2日 / コラム, ニュースキュレーション

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text:中島由弘(Yoshihiro NAKAJIMA)/OnDeck編集委員

インプレスグループでは電子書籍の黎明期である2003年から電子書籍市場の調査を継続していて、今年で11年目を迎える。2012年度の推計値によると、電子書籍市場規模は729億円で、前年(2011年)の629億円から100億円(15.9%)増加している。ここでは、電子書籍の市場規模について発表資料をもとに解説するとともに、米国の市場動向との比較をしながら、さらにニュースを読み解いてみよう。

日本の2012年度の電子書籍市場規模は前年比15.9%増の729億円

本年度の調査結果によると、日本の2012年度の電子書籍市場規模は前年比15.9%増の729億円と推計している。特に、日本の場合はPCや携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆる“ガラケー”)でのコミックやケータイ小説の市場が立ち上がっていたことが特徴となっている。そして、2012年には楽天グループのコボ、アマゾン社のキンドル、アップル社のiBookstoreをはじめ、国内の大手書店などが運営する電子書籍ストアーが続々とオープンし、この調査でいうところの“新たなプラットフォーム向け電子書籍市場”が本格的にスタートした年ということができるだろう。今後はこの“新たなプラットフォーム”が成長をし、2017年には2390億円になると予測をしている。

図1:日本の電子書籍市場規模の推移(出典:http://www.impressbm.co.jp/news/130627/ebook201)

図1:日本の電子書籍市場規模の推移(出典:http://www.impressbm.co.jp/news/
130627/ebook201

日本の電子書籍売上シェアは約8%か

では、この日本市場の規模は先行する米国市場との比較ではどう位置づけられるのだろうか。米国の書籍市場規模についてはAAP(Association of American Publishers;米国出版社協会)とBISG(Book Industry Study Group;書籍産業調査研究グループ)が調査しているBookStat2013の数字を使う。これは出版業界で標準的に参照されている調査結果である。この数字を利用する際の注意点としては、日本の市場規模の調査が小売をベースにしているのに対して、BookStat2013では出版社の出荷(卸)をベースとしている点だ。これを小売ベースの規模に拡大するためには、米国市場での出荷ベースの金額を約2倍にすると近似すると言われている。ただし、出版物の発行区分なども日本とは異なるので、単純に分析をすることはできない。ここではあくまで市場規模のイメージを大雑把に把握する程度での利用に留めている。
このBookStat2013によれば、2012年の米国の電子書籍市場規模(出荷)は30億4200万ドル(約3000億円)で、これは前年2011年と比較すると44%増(1.44倍)になっている。また、一般書分野の書籍全体(プリント版と電子書籍)での市場規模(出荷)は150億4900万ドル(約1兆5000億円)で、同じく前年2012年と比較すると6.9%増(1.069倍)と微増となった。したがって、電子書籍は一般書籍全体に対して、約20%を占めるに至っている。つまり、5冊に1冊が電子書籍ということである。
対前年度からの成長率でいうと、2012年は44%となり、それまでは3桁の成長を続けてきたことと比べると“鈍化”していると評されているようだ。しかし、大局的な産業界の見方としてはこれからも電子書籍市場の拡大は続くと見ている人が多く、安定成長期に向かいつつあるといってよいのではないだろうか。

図2:米国電子書籍市場規模(出荷)推移(出典:Publishers WeeklyのBookStat2013に関する報道を元に編集部グラフを作成)

図2:米国電子書籍市場規模(出荷)推移(出典:Publishers WeeklyのBookStat2013に関する報道を元に編集部グラフを作成)

さて、米国の書籍全体に対する電子書籍の売上構成比が20%であるということは大手の出版社の業績発表からもうかがい知ることができる。つぎの表が直近で発表されている各社の業績発表から電子書籍(一部の出版社は電子書籍にオーディオブックを含む)の売上構成比を抜き出しているものである。

図3:直近に発表になった大手の出版社の売上に対する電子書籍(オーディオブック)の売上構成比率(各社ニュースリリース、報道記事を参考に編集部で作成)

図3:直近に発表になった大手の出版社の売上に対する電子書籍(オーディオブック)の売上構成比率(各社ニュースリリース、報道記事を参考に編集部で作成)

ここでも、電子書籍の売上構成比はおおむね20%を超えたあたりにあり、BookStat2013の結果とも符合する。ただし、ここに挙げたビッグシックスと呼ばれている米国の大手の出版社は市場でのシェアも大きいのでマクロな調査の結果と連動しているようにみえるのだが、多くの中小独立系出版社では状況も大きく異なるだろう。まったく取り組めていないところもあるだろうし、逆にフットワークも軽く扱うメディアの種類を変更したところもあるかもしれない。
一方、日本の書籍市場規模は出版科学研究所が2013年1月25日に発表した8013億円がよく参照されているが、この中に含まれるのはプリント版の書籍の売上のみで、電子書籍の売上は含まれていないと仮定する。これにインターネットメディア総合研究所が発表している冒頭で紹介した電子書籍市場規模の729億円を加えると8742億円となり、電子書籍の構成比は約8%になる。この売上構成比は米国の2009年頃の数字と近い。つまり約3年遅れて成長をしている市場といえるかもしれない。
つぎの業界的な関心はいつ電子書籍の売上構成比が50%を超えるか、つまりプリント版の出荷を電子書籍が超えるのはいつかということであろう。これに関して、米国の大手のコンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2013年6月に“2017年に電子書籍がプリント版書籍を逆転”するという予測を発表している。日本が米国から3年遅れで進行していると考えると、日本で50%、つまり4000億円規模(書籍市場規模が今年の規模を維持した場合)に到達するのは2020年ごろといえるかもしれない。

図4:プライスウォーターハウスクーパースが発表した電子書籍とプリント版書籍の売上逆転予測(http://www.pwc.com/gx/en/global-entertainment-media-outlook/index.jhtml)

図4:プライスウォーターハウスクーパースが発表した電子書籍とプリント版書籍の売上逆転予測(http://www.pwc.com/gx/en/global-entertainment-media-outlook/index.jhtml

なお、日本の電子書籍市場規模についての詳細な調査結果は、発売予定の下記の調査報告書に記載されている。

  • 書名:電子書籍ビジネス調査報告書2013
  • 編者:インターネットメディア総合研究所
  • 発売日:2013年7月18日(木)
  • 価格:CD(PDF)版60,900円(税込)/CD(PDF)+冊子版71,400円(税込)
  • 判型:A4判
  • ページ数:250p
  • URL:http://r.impressrd.jp/iil/ebook2013

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