いよいよ電子図書館元年がやってくる?!〜 第16回図書館総合展レポート

2014年11月10日 / レポート

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text: 中島由弘(Yoshihiro Nakajima)/OnDeck編集委員

2014年11月10日

過去最大となった来場者と電子図書館の機運の高まり

2014年11月2日から8日まで、第16回図書館総合展(主催:図書館総合展運営委員会)が神奈川県のパシフィコ横浜で開催された。主催者の発表によると、展示会開催期間である11月5日〜7日の3日間における来場者は31632人(昨年は29963人)と過去最大になったという。

展示会には出版社や関連団体をはじめ、図書館向けの什器やシステムを提供する事業者などが出展をしている。中でも、電子出版と関係する企業はメディアドゥ、京セラ丸善システムインテグレーション、大日本印刷など、初夏に開催されている東京国際ブックフェア(電子出版エキスポ)とも重なる。

特に、電子書籍流通事業の大手メディアドゥは米国における電子図書館向け配信事業の大手オーバードライブとの提携を初夏に発表していて、今回はその具体的なサービス内容をデモンストレーションするということで注目されていた。さらに、2015年4月からはキャンペーンとして初期費用0円(ランニングコスト、書籍購入費用は別)のキャンペーンを開始すると発表し、図書館関係者への積極的な説明をしていた。また、慶応義塾大学メディアセンターとは電子図書館に関する実証実験を行うことも発表している。

その他、製本された資料やフィルムなどのスキャンニングサービス、書誌の検索システムなども展示されていて、電子書籍の閲覧や貸し出しサービスだけでなく、アーカイブを制作する上での技術やソリューションも多く出展されていた。

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写真1:第16回図書館総合展の展示会風景

出版社も図書館も利用者の利便性を考えるべし

コンファレンスは図書館の運営などをテーマとしたものが多いが、電子書籍の広がりを背景とし、電子図書館をテーマにした枠が昨年と比較して増加をしている。展示会初日には「電子出版ビジネスと図書館の共存に向けて〜三省懇を検証し、未来を展望する」と題したコンファレンスが開催され、その中の基調講演に長尾真氏(前・国立国会図書館長)が、それに続くパネルディスカッションには植村八潮氏(専修大学教授/前・出版デジタル機構会長)、永井祥一氏(日本出版インフラセンター・専務理事)、松原聡氏(東洋大学経済学部教授)、湯浅俊彦氏(立命館大学文学部教授)が登壇をした。

長尾氏は自身が館長を務めたときに提言していたいわゆる「長尾モデル」という国会図書館の電子図書館をクラウドとした検索や貸し出しサービスに加え、民間企業の販売システムへのコンテンツ供与の可能性についてもあらためて言及し、いまこそ国会図書館のアーカイブを使った電子出版インフラについて再検討すべきだと述べた。これに続き行われたパネルディスカッションでは電子図書館という観点よりも、これまでの電子書籍業界動向、特に三省懇の立ち上げからのこれまでの経緯、パブリッジやJPO近刊情報センターの意義などについて植村氏、永井氏が語った。松原聡氏は研究者という書籍のヘビーユーザーの観点からの発言をされ、電子化によって、より容易に、より安価に必要な情報にアクセスできるよう、出版社や図書館はサービスという観点での事業の設計をしてほしいと述べた。

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写真2:元・国立国会図書館長長尾真氏

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写真3:パネルディスカッションに登壇した(写真左から)湯浅俊彦氏、植村八潮氏、永井祥一氏、松原聡氏、長尾真氏

電子図書館元年を迎えるには課題も多い

電子図書館に関してはメディアドゥとオーバードライブ、京セラ丸善システム・インテグレーション、TRCなどの複数のソリューションもあり、大学図書館などでは実証実験も始まっている。今後、メディアドゥは公共図書館へのアプローチを開始すると思われるが、問題は公共図書館の予算措置、そして著作権者と出版社から図書館での貸し出しについての許諾が得られるかということがある。特に、メディアドゥとオーバードライブの調査では、図書館で貸し出すことで、出版社の売り上げは増加するという米国の統計を元にして提案をしていくものと思われるが、図書館、出版社、著作権者側がそうしたそれを理解するまでには時間も必要だろう。出版業界全体は長年できあがったシステムの上にあったので、あらためて読者の満足度を最大化するサービスとして設計するという発想をすることは難しいことだからだ。しかし、こうした大きな変革期をチャンスに変えていこうとするチャレンジこそが最も重要なことではないだろうか。

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■OnDeck weekly 2014年11月13日号掲載

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