[実証実験]これからPODを始める出版社のための確認項目一覧
2015年7月15日 / 実証実験レポート
一般社団法人電子出版制作・流通協議会(以下、AEBS)が2015年7月14日に発表したのが、「オンデマンド印刷における入稿仕様策定のための確認項目一覧」です。このとりまとめにはインプレスR&Dも参加していますので、今回はAEBS参加メンバーの立場で狙いなどについて紹介します。
出版社はPODをよく知らない?
今回発表した「オンデマンド印刷における入稿仕様策定のための確認項目一覧」は、AEBSの技術委員会 オンデマンド制作流通部会でまとめたものです。本部会には、大日本印刷、凸版印刷、共同印刷、日本HP、富士ゼロックス、光和コンピューター、そしてインプレスR&Dなど、PODの実務経験を持つ企業が参加しています。
AEBSでPOD(プリント・オンデマンド)に関する研究部会が始まったのは、2013年の秋。PODの現状などについて相互理解を高めることを目的として始まりました。その中で話題となったのが、PODで使われているデジタル印刷機に適したデータ(主にPDFファイル)をどう作ればいいのか、実は出版社は知らないということでした。
理由はシンプルです。PODはPDFファイルさえあれば印刷可能なのですが、一般的な出版物はInDesignなどのDTPソフトで作成したファイルで納めるのが主流だからです。そのため、どういうルールでPDFファイルを作成すればいいのか、その目安となるものが必要ではないかという議論となり、今回発表した確認項目一覧を検討することになりました。
もちろん、出版社だけではありません。受け入れ側である製作会社(印刷所など)側でも入稿仕様を定義しなければいけないのですが、「応相談」といった部分が少なからずあるため、結果としてやりとりが煩雑になりがちであるのも課題でした。今回の確認項目一覧を利用することで、製作会社側で容易に入稿仕様書を作成することができるようになります。
なお、この確認項目一覧は、PODの「業界標準」を目指したものではありません。あくまでも、出版社と製作会社とのやりとりをスムーズにするための目安という意味を込めてまとめています。
デジタル印刷機対応のPDF作成の基本を整理
この確認項目一覧のポイントは、大きく2つです。
ひとつは、PODで使われるデジタル印刷機の特性を考慮したPDFファイルの仕様を整理しているという点です。PDFのバージョンはどうすればいいのか、カラー設定や透明効果などPODでトラブルが起きやすい箇所はどこなのかなど、参加メンバーである印刷会社やプリンタベンダーなどの経験を反映し、確認すべき項目を一覧としてまとめています。結果的に経験者にとっては当たり前とおもわれることばかりですが、初めて利用する際に意思疎通を図るためにも確認すべき項目であるのは間違いありません。
もうひとつは、特定のPODストアを対象としてはいないという点です。各方面に事前プレビューを行った際、アマゾンPODの仕様と異なる箇所があるという指摘を受けましたが、それは当然のことです。今回まとめた確認項目は、すべてのPODで共通となる事項をまとめており、個別ストアの仕様には踏み込んでいないからです。
本当はシンプルなPOD入稿
PODを上手に使いこなすには、仕様を共通化することが重要です。ここでいう共通化は、すべてのストア(製作会社も含む)の仕様を共通にするというのではなく、自社で作成する書籍データのファイル仕様を共通化するということです。原則、PDFファイルを用いて入稿するPODの場合、製作仕様を共通化することで、さまざまなストアへの展開が容易になります。これは電子書籍と同様です。
今回、AEBSがまとめた確認項目一覧は、この仕様の共通化の一助となるものです。なにより、製作会社(印刷所やストアを含む)とのやりとりがスムーズになることで、工数削減などさまざまなメリットが得られることとおもいます。
なんとなくPODは難しいとおもわれがちですが、今回発表した確認項目一覧をみていただければ、シンプルなルールに則っているのがわかるでしょう。
オンデマンド印刷における入稿仕様策定のための確認項目一覧
http://www.aebs.or.jp/On-demand_printing.html