[視点]続・電子書籍市場動向〜「火花」は電子書籍市場規模に影響を与えるか?

2015年8月5日 / ニュースキュレーション

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 インプレス総合研究所の「電子書籍ビジネス調査報告書」が発売を告知するニュースリリースに、いくつかのデータが掲載されている。特徴的なのは「図表1. 電子書籍利用率の推移(PC調査)」というもので、2011年から経年での電子書籍利用者比率の推移を見ているものだ。それによると、2014年から2015年にかけては電子書籍利用者(有料の電子書籍利用者と無料の電子書籍利用者の合計)がわずか3%しか増加していないという点だ。有料の伸びはゆるやかだったとしても、無料の伸びが高まらないことには市場の拡大の可能性が見えてこない。つまり電子書籍の「お試し」のユーザーですら、あまり増加していないといえるだろう。
 また、又吉直樹氏の「火花」が印刷版が144万部に達し、電子書籍版は7万ダウンロードを突破したと発表されている。比率にして5%弱となり、くしくも、昨年OnDeck編集部が推計しているコミックを除く電子書籍の印刷版に対する比率と近似している(日本の電子出版物の売り上げ構成比率は5.7%〜電子書籍市場の約8割をコミックが占める(OnDeck 2014年7月15日号))。ひょっとすると、印刷版の重版が間に合わず、書店店頭でみつからず、品切れのない電子書籍版を購入した人も多いかもしれない。
 価格1000円の電子書籍が7万部販売されると(さらに売れる可能性がある)、最低でも7000万円という売り上げになり、来年の電子書籍市場規模統計には少なからず影響が出そうな規模である。いずれにしても、こうしたベストセラーが電子書籍市場が成長できるきっかけとなることを期待したい。

ニュースソース

  • 『電子書籍ビジネス調査報告書2015』7月30日発行〜今年で13年目を迎える定番調査。スマホユーザーに特化した調査結果も収録〜[ニュースリリース
  • 又吉「火花」144万部またまた増刷 電子書籍も7万ダウンロード突破[ネタりか]* 出版科研、上半期は販売額4・3%減 雑誌が書籍を下回る[文化通信
     
     
    ※初出時、書名を間違って記載しておりました。お詫びして訂正します。(2015/8/3 11:00)

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