[実証実験]やっと?ついに?海外で日本語POD書籍の販売開始
2015年8月21日 / 実証実験レポート
エスプレッソ・ブック・マシンを使った日本語POD書籍の海外販売を開始しました。実は仕組みそのものは以前からあったのですが、やっと利用して販売を開始できたということです。今回は、この経緯などを紹介します。
ネットワーク機能によりコンテンツ流通機能を持つエスプレッソ・ブック・マシン
インプレスR&DのNextPublishingがエスプレッソ・ブック・マシンを使ってPOD書籍の販売を開始したのは、2012年6月でした。現在も販売中ですが、三省堂書店が導入したエスプレッソ・ブック・マシンを活用して実現しています。
このエスプレッソ・ブック・マシンは、ローカル環境にあるPOD用データを用いて印刷製本する機能と、エスプレッソ・ブック・マシンが持つネットワーク経由でPOD用データをダウンロードして印刷製本する機能の2つの仕組みを持っています。NextPublishingをはじめとする国内の出版社の多くは、エスプレッソ・ブック・マシンのネットワークにデータを預けるのではなく、三省堂書店のローカル環境にのみデータを預けています。一方のネットワーク経由で配信されているPOD用データは洋書が多く、洋書の入手手段として使われています。
今回、このネットワーク上にNextPublishingのPOD用データを登録することで、世界中にあるエスプレッソ・ブック・マシンで購入可能となったのです。
三省堂書店はエスプレッソ・ブック・マシンの代理店
インプレスR&Dでは1年以上前から、三省堂書店と共同で海外販売を行うための事前準備を行っていました。なぜ、三省堂書店とおもわれるかもしれませんが、実は三省堂書店はエスプレッソ・ブック・マシンの代理店として活動しているのです。
最初にチャレンジしたのが、国立国会図書館所蔵データを利用して作成した「NDL所蔵古書POD」です。エスプレッソ・ブック・マシンは書店のほか、大学の図書館に設置されているケースが多く、研究対象として配信するのに適していると判断して取り組みました。
しかし、これはなかなかうまくいかなかったのです。書籍の綴じ方向が原因でした。洋書の場合、左綴じが基本です。これに対し、日本語の書籍(特に国立国会図書館所蔵の古書)は基本が右綴じとなるため、さまざまなトラブルが発生したのです。たとえば、裏表紙が表紙として処理されてしまったり、製本機がうまく作動しない(正確にはエスプレッソ・ブック・マシン導入書店側で製本時に用紙の向きを変えるといった工夫が必要)といった細かな問題が起こりました。これらは三省堂書店を経由して、開発元である米OnDemand Books社に修正依頼をしたのですが、解決までに至らなかったのが現状です。
そのときの成果?は下記のリンクで確認できますので、興味のある方はご確認ください。
* http://net.ondemandbooks.com/odb/selfespress/9784864780773
三省堂書店で取り扱っているPODなら海外販売可能
しかし、一定の成果はありました。当初は書誌を英語で記述しなければならないなど制約があったのですが、やりとりの結果、日本語のまま登録可能であることが確認できたのです。つまり、日本で販売しているのと同じ状態で、そのまま登録しても問題ないということです。
であれば、登録しない理由がないということで、グーグルのクラウドアプリの解説書籍「仕事で使える!シリーズ」の全タイトルを登録したのが、今回発表した内容です。
価格はドルベースにしなければなりませんが、書名、著者名、説明文などはそのまま登録できます。なにより、三省堂書店が代理店として働いていただいたおかげで、三省堂書店のローカル環境にあるPOD用データをそのままアップロードできました。つまり、三省堂書店で販売している(右綴じの書籍を除いた)すべてのPOD書籍は、今すぐ海外でも販売できるというわけです。
課題はいかに海外の読者に知ってもらうか、そしてエスプレッソ・ブック・マシン設置店に足を運んでもらうか、サプライチェーンはできましたが実売につなげるには別の努力が必要です。このあたりは今後、このコーナーで成果を発表する予定ですのでご期待ください。
・エスプレッソ・ブック・マシン(米OnDemand Books社)
http://ondemandbooks.com/