[視点]米国電子書籍市場の減速に関するさまざまな観点からの論評
2015年10月6日 / ニュースキュレーション
米国の電子書籍市場の減速が報じられてた後、各媒体がこの状況に関しての分析や論評を掲載している。それらを総合すると、大手出版社がアマゾンとの取引条件交渉で獲得した価格決定権、すなわちエージエンシーモデルによって、小売価格をじわじわと上昇させ、印刷版との価格差がなくなりつつあるところまで来たことが主因ではないかとしている。価格差がそれほどないのであれば、手元にカタチとして残る印刷版を選択したくなる読者もいるということのようだ。確かに、読書好きな人にとって、本を購入する予算はそれなりの金額になるので、少しでも安い方が経済的には助かるという側面はあっただろう。一方で、アマゾンがいうように電子版であれば注文してから、すぐに手に入るというメリットもあるが、印刷版でも配送にかかる時間は短縮されつつあるので、そのメリットとデメリットをてんびんにかけて考えるという厳しい消費者の価値観が現れていると思える。
また、出版社も倉庫や物流に新たな投資をしているという記事もある。その経営的な意図は十分にはわからないが、物流インフラを強化することで、顧客からの注文を受けて、手元に届けるまでの時間をより短縮することを目指しているのだろうか。特に米国の出版業界は日本とは異なり、出版不況下にはなく、大手出版社は大量の見込み生産を行うことで生じる利益性を活かすビジネスモデルにあるので、産業背景が日本とは大きく異なることから、われわれからするとなかなか理解しにくい。
いずれにしても、アマゾンが大きなシェアを維持して市場をコントロールしていることには不満が根強くあると考えられ、このままアマゾンがコントロールするプラットホームに縛られていたくないう意識は間違いないのではないか。
ニュースソース
- 印刷版が戻ってくる、そして電子書籍売上が負ける[Gizmode]
- 個人作家向け市場調査サイト「Author Earnings」レポート、「個人作家のほうが商業作家より儲かっている」[hon.jp DayWatch]
- アメリカで電子書籍の売上が大失速!やっぱり本は紙で読む?[現代ビジネス]
- 米国E-Book「市場絶滅」論争(1)[eBook2.0Forum]
- 電子書籍売上は凹んだが、プリント版は戻ってくるのか?[Engadget]
- E-Book市場で後退した大出版社(1)誤算[eBook2.0Forum]