[実証実験]やっかいな縦横問題(舞台裏 第2回)

2015年10月27日 / 実証実験レポート

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 今回の書籍化では、易しい読みものの雰囲気を出すため、元々横で書かれていた原稿を整え、縦書きで出版する予定です。著者であるOnDeck編集長曰く、「原稿レベルで用語の統一や不統一な場合は意図して違う表記をしているから、用字用語の統一はほとんどしなくていいはず」とのことでした。しかし実際に原稿を見てみると、横書きから縦書きにするために生じる用語の調整が非常にたくさんありました。
 著者の井芹編集長も意図していると言っているので、固有名詞は原則オリジナル原稿の表記を生かそうと思っていました。このルールに従えば、例えば、「Amazon」と「アマゾン」の不統一はそのままで構わなくなりますが、「Amazon」と縦書きの文章中で90度回転させたまま半角にするか、「Amazon」と全角にするか、など考えだすときりがありません。「Amazon」とした場合、「JEPA」など大文字の略称も固有名詞なので、同じく「JEPA」のままになります。ただ、大文字の略称の場合、特に短いと「JEPA」のようにしたくなります。「KADOKAWA」は半角でも違和感がありませんが、「NTT」には違和感があります。

左は違和感なしですが、右は全角にしたくなります。

左は違和感なしですが、右は全角にしたくなります。

 当初、縦で欧文をすべて片仮名にしたのですが、「NextPublishing」「OnDeck」まで「ネクストパブリッシング」「オンデッキ」としたら、著者である編集長や編集部からは、さすがに大胆すぎると言われてしまいました。
 横書きにすれば解決しますが、ただでさえインターネット用語が多い原稿なので、伝統的な出版業に携わる方にも読みやすい縦書きにしたいと強く思っています。OnDeckでEPUB3が話題になっていたころ、電子書籍の縦書き問題について編集部内で「雑誌で横書きを縦にしたら、売り上げが伸びた」といったような事例を聞きました。

 このような表記のルールをハウスルールと呼ぶそうです。OnDeckは横書きのメディアなので、縦のハウスルールはほぼありません。まだ編集中ですが、「ひらく」のか――「所」を「ところ」にするなど、漢字で書かれたものをひらがなで表記することを「ひらく」というそうですが、OnDeckやNextPublishingの現場では、「cm」を「センチメートル」に、「iOS」を「アイオーエス」のようにする場合もひらくという用語を使っています――そのまま表記するのか、判断に困る場面が出てきそうです。
 それにしても、縦書きの本をつくる場合、著者からの原稿は縦で届くのでしょうか。横で書かれたものを縦にするのは、全半角の変更などとても手間がかかるように思います。NextPublishingでは自動組版を用いているので、マスター原稿を直すと印刷用データもその場で確認できますが、普通、DTPの現場で変更しているのでしょうか。それではマスターデータに反映されないと思いますが、みなさんはどうしていますか。
(OnDeck編集部 細谷)

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