人工知能やIoTを活かし、産業構造を変革しなければ日本は生き残れない〜「日本はなぜ負けるのか」出版記念鼎談
2016年7月1日 / レポート
インプレスR&Dは電子出版プラットホームであるNextPublishingにより「日本はなぜ負けるのか〜インターネットが創り出す21世紀の経済力学」を出版した。それを記念し、去る6月30日夜、著者の藤原洋氏をはじめとし、一橋大学イノベーションセンター教授の米倉誠一郎氏、政策研究院大学院大学副学長の上山隆大氏という日本を代表する経営学、政策立案の識者を招き、出版記念鼎談を開催した。
著者である一般社団法人インターネット協会理事長の藤原洋氏は本書において「過去の20年間に、世界で日本の国内総生産(GDP)だけが減少している」ことを指摘し、その原因が従来型の下請け構造を維持したままのIT産業にあるとしている。日本の「失われた20年」のあいだに、世界ではインターネットにより経済構造が変化を遂げ、新しい産業が生まれたのに、われわれはそれを見過ごしていたというわけだ。
また、米倉誠一郎氏は「日本は課題をハードウエアで解決しようとしてきたが、もはやそれは限界である」とし、コンピューターネットワークや情報処理によって解決することを考えるべきであると指摘をする。さらに、内閣府で政策立案に携わる上山隆大氏は日本政府の技術に対する取り組みの遅さを指摘している。例えば、人工知能(AI)について、グーグルは一企業として1000億円もの資金を投じて研究開発をしていることに対し、日本政府は国のレベルでもわずか200億円程度しか投じていないという。予算がないわけではなく、既存分野への配分(=既得権益)を動的に変更できない、変更しようとしないことが問題だと指摘をしている。つまり、国としての日本はもちろん、日本の企業活動(産業)も、いま世界で起きているイノベーションに対して、競争をするうえでの軸が定まっていないということだ。
藤原氏は日本の人口構成や出生率を見ると、労働人口が大幅に減少をすることは間違いないとしたうえで、今後はAIやIoTなどの技術を使って、人ではなくモノに働かせる産業構造を構築しなければさらにこの国の生産性は減少を続けるだろうとまとめた。さらに、この国が生き残っていくためには、国の補助金などに頼ることなく、産業界がリードしてイノベーションを主導すべきだと締めくくった。

写真(左から):著者である藤原洋氏(一般社団法人インターネット協会理事長/株式会社ブロードバンドタワー代表取締役/インターネット総合研究所代表取締役)、上山隆大氏(政策研究院大学院大学副学長・教授)、米倉誠一郎氏(一橋大学イノベーション研究センター教授)
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日本はなぜ負けるのか〜インターネットが創り出す21世紀の経済力学(藤原洋・著) http://nextpublishing.jp/book/7817.html