[編集長コラム]テクニウムとは

2015年3月19日 / 電子メディア雑感

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 先週、「『テクニウム』を超えて――ケヴィン・ケリーの語るカウンターカルチャーから人工知能の未来まで」、という本をインプレスR&DからNextPublishingにより発行しました。元朝日新聞の服部 桂氏がケリー氏にインタビューしまとめた本で、テクノロジーとは何かを初めて体系づけた同氏の著書『テクニウム』の次の世界を聞いています。
 ケリー氏は米国WIREDの創刊編集長で、『テクニウム(みすず書房刊、原題:WHAT TECHNOLOGY WANTS)』でテクノロジーについての斬新な解釈を発表したことでファンも多数です。『テクニウム』では、現代の情報化、非物質化への流れを踏まえつつ、テクノロジーを生命における生態系と同等なものとして捉え、その活動空間を〈テクニウム〉と定義しています。それはこれまでにはなかった斬新な視座で、その筋の人たちに衝撃を与えています。
 インタビューアの服部氏は、『テクニウム』の訳者であり、ケリー氏との親交もあり、今回の企画につながったと聞いています(でも一番の動機は、服部氏本人がテクニウムの次の予見を聞きたかったのではないかと推察していますが)。
 

 ケリー氏の、テクノロジーは生態系のようなものという主張は、『テクノロジーとイノベーション』(ブライアン・アーサー著、みすず書房刊、原題:THE NATURE OF TECHNOLOGY)での「技術は組み合わせであり、階層構造を持つ」という考えをさらに拡張したもののように思えます。また、前にこのコラムでも紹介した、松岡正剛氏の「情報が先にあり、情報が人間を作った」という考えとも符合する部分があるのではないでしょうか。我々は、この時代になってやっと情報や技術の正体を分かり始めていると思ったほうがよさそうです。
 ちなみに、「IT」とは情報技術(Information Technology)のこと。さらに言えば、「電子出版」はデジタル技術で情報を扱う分野です。ケリー氏が提唱する一連の解釈は、電子出版に関与する我々こそ耳を傾けておく必要があることではないでしょうか。出版業界ではまだ、ITを自分とは直接関係ないこと、またエンジニアや技術者の仕事のことだと思っている方が多いように見受けます。このあたりで、新しい解釈を受け入れてみてはいかがでしょうか。
 

OnDeck編集長/インプレスR&D 発行人 井芹 昌信

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