[編集長コラム]合併・買収・提携・協業
2015年4月9日 / 電子メディア雑感
今週、イーブックイニシアティブジャパンとクックパッドの資本業務提携が発表されました。先月には、楽天による電子図書館プラットフォームの世界最大手、米OverDriveの買収、紀伊国屋書店と大日本印刷による合弁会社設立、講談社とハースト婦人画報社の業務提携が発表されています。
少し遡れば、講談社とデジタルガレージ、ドワンゴとKADOKAWA、BookLiveとカルチュア・コンビニエンス・クラブなども記憶に新しく、このところ「合併・買収・提携・協業」のニュースが目立ってきています。
これらの一連の動きは、斜陽している出版産業での生き残り戦略・戦術の表れだと言えるでしょう。その背景や狙いは各社各様と推察しますが、基本的には歓迎すべきいいことではないでしょうか。
1つには、別の血が混じることにより、独自色の強い出版社の企業文化に変化をもたらすことができると思うからです。それと、一番大事なこととして、別の機能を持つ企業同士が組み合うことによる新しい価値創出が期待できると思うからです。
一般的な解釈によれば、合併・買収は資本関係を伴う関係強化です。この場合は、規模も大きくなり組織的にも大きな変化となります。時間もお金もかかると覚悟しなければならないでしょう。私が知っている例だと、軌道に乗るまで3~5年くらいの我慢が必要となっていました。
提携・協業のほうは、資本関係がなくても可能な関係構築です。一般に提携は協業より強い意味で使われ、契約がある場合を言うことが多いと思います。つまり、結合の強さで言えば、「合併・買収>提携>協業」の順ということになるでしょう。
私は、かならずしも資本関係を持つ必要はないと思っています。提携・協業であればすぐに始められるし、一番のハードルとなるであろう文化ギャップを乗り越える必要もありません。また何より、事業を前提とした提携なら、うまくいった際に即売上獲得につながります。
提携の中身としては、「企画と営業」「コンテンツとテクノロジー」「出版とネット」などの組み合わせが考えられますが、価値の創出を前提に考えるなら、自分が持っていない機能を持っている企業と組むほうが効果ありだと思います。具体的に出版社を軸に考えれば、デジタルメディアへの拡張、販路の拡張がテーマになることでしょう。
自社だけ、または従来からの取引先だけとのコミュニティではこの難局を乗り切るのはむずかしそうです。新たなパートナーとの関係構築による新たな組み合わせ価値の創出に、積極的にチャレンジしたいものです。
OnDeck編集長/インプレスR&D 発行人 井芹 昌信