[視点]米国の電子書籍市場は失速か?
2015年5月14日 / ニュースキュレーション
AAP(Association of American Publishers;米国出版社協会)が2015年1月の出版市況に関する指標を発表した。それによると、電子書籍は昨年同月比で-2.1%と縮小傾向を示した。この指標は毎月発表されているものだが、今回の発表にはAAPの不手際もあったようだ。当初、「-10.2%」という驚くほど大きな失速を示す数字が発表されたのだが、AAPの調査方法や集計方法の信頼性などに対して指摘がされたことから、新たに精査をしたうえで、修正した数字として「-2.1%」と発表したのだ。
米国の電子書籍市場に関する指標は、かつてBISG(Book Industry Study Group)が大規模な統計的調査を行っていたのだが、昨年をもって調査から撤退し、現在ではAAPの発表する数字が唯一の指標となっている。しかし、AAPは出版社の業界団体であり、その調査は加盟している出版社にアンケートを実施して、回答を積み上げた数字として発表していることから、市場全体の動向を表していないのではないかという指摘もされてきていた。
いずれにしても、米国の電子書籍市場が「精査した上でも」下落傾向を示していることから、これまでの一本調子での拡大路線ではなくなっていることを再認識させられ、新たな顧客層の獲得はもとより、電子書籍というパッケージへの読者の定着を促していくための施策などが求められていることも見えてきた。
ニュースソース
- AAP発表、米国内の2015年1月の電子書籍売上高は前年同月比-10.2%と失速(注記あり)[hon.jp DayWatch]
- AAPが1月の統計を修正[Publishers Weekly]