ハイブリッド出版が新潮流に?

2013年6月3日 / ニューススタンド

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text:林田 陽子

「ハイブリッド著作者」に注目が集まっている。既存出版方式で実績のある作家がセルフパブリッシングを行ったり、セルフパブリッシングで人気を得た作家が既存出版社から本を出したりするケースだ。両方を組み合わせて利用する著作者もいる。著作者自身がそれぞれのメリットや費用を検討して主導的に出版する動きが高まっている。

セルフパブリッシングで電子書籍が大ヒットした作家が既存出版社と高額の契約を結ぶ例はすでに数多くある。彼らはビジネス面でもさまざまな契約形態を考案するなど工夫をしている。電子版の権利を持つことで、電子版は自分の判断で非常に安い価格で販売を続けたり、ユーザー数の多い小説投稿サイトで宣伝をしたり、コミック化の権利を販売したりしている。
逆に言えば、著作者は作品を書くだけではなく、適切な支援サービスの選択や宣伝を行う「ビジネススキル」が今まで以上に必要とされるようになった。

「ハイブリッド出版」を選ぶ理由

先日のBEAで開催されたIDPF Digital Book 2013で、電子出版情報サイトのDigital Book Worldと著作者向けオンラインコミュニティサイトWriter’s Digestが共同で行った「ハイブリッド出版」に関する調査の一部を発表した。あらゆるジャンルの約4000人の著作者を対象に実施。調査の目的は、著作者の考えや希望を分析して、出版社、エージェント、セルフパブリッシング・プラットフォームが新しい出版方式でビジネスチャンスを得られるようにすることだ。
ハイブリッド著作者に次作をどちらで出版したいか尋ねた所、希望はほぼ半数ずつだった。セルフパブリッシングしようと考える理由としては、創作に関してすべて自分でコントロールできる、収入金額、出版のプロセスが簡単だから、といった回答が得られた。一方、次作を既存出版したい著作者の場合、各種支援が受けられる、販売ルートが全般的に広い、大手出版社から出す方が、格が高いと評価されるなどとなっている。
収入面は両者がかなり接近してきている。本一冊の平均収入は、ハイブリッド出版は3万8540ドル、既存出版は2万7758ドル、セルフパブリッシングのみは7630ドルだった。

著作者のコミュニティも一役

このようにプロ/アマ著作者著者と既存/セルフ出版方式両方の「相互乗り入れ」が進んできた背景には、実績のある著作者でも出版社に本を出してもらうのが難しい状況になっていること、セルフパブリッシング支援ビジネスが充実してきていること、紙、電子を問わずオンライン販売が増えて、いずれにしろプロモーションを自分自身でかなり積極的に行わなければならない状況になっていることが挙げられる。
実績のある作家がセルフパブリッシングに進出する例も増えているようだ。知名度がある程度高い作家がKickstarterで募金をして数十万円から数百万円の出版資金を調達しているケースもある。また、セルフパブリッシングのさまざまな機能について研究して、編集者、校閲者、デザイナーなどを自分で雇って「チーム」を作り、本を製作したり、Espresso Book Machineできちんとした体裁のPOD(プリント・オンデマンド)本を製作して、書店で販売したりする例が各種メディアで紹介されている。中堅著作者がセルフパブリッシングでかなりの収入を得ている例もあるという。
著作者のコミュニティも充実してきて、成功した作家がノウハウを伝授する例もある。有用なセミナーも開催されているようだ。
著作者たちの横のつながりが新しい出版形態の確立に大きな役割を果たすようになるかもしれない。

参考
Digital Book Worldの紹介ページ
http://store.digitalbookworld.com/understanding-hybrid-authors-what-successful-authors-want-from-publishers-u9723
publishersweeklyの報道記事
http://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/bea/article/57512-bea-2013-idpf-2013-authors-readers-data-the-future.html

林田陽子:翻訳家、司書。1978年、慶應義塾大学文学部卒業。同大学日吉情報センター、日経マグロウヒル(現日経BP社)、アスキーに勤務。1986年より翻訳業に専念。2010年6月から、ジェリー・パーネル氏の「Computing at Chaos Manor」をScience Book Clubにおいて、Web閲覧方式とEPUBファイルダウンロード方式で販売中。

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